三浦祐之『古事記のひみつ』

この本では、著者によって、古事記偽書説に対する考えが述べられている。
つまり、古事記の序文は偽物であろう。しかし、古事記の本文は、逆に、序文にある年代より古いくらいである、と。
序文が偽物と判断する理由としては、やはり、天武天皇の頃の、日本書記と同じ時代に、別に史書をつくるというのが、どう考えても普通じゃない、ということ。もう一つの理由としては、すでに偽物と分かっている、『先代旧事本紀』の序文に、酷似していること。
本文が圧倒的に古いだろうという理由としては、やはり、「も」音韻の区別が、そう考えることで、より自然になるだろう、ということ、らしい。そのほかにも、表現上の、比喩的な面からのアプローチもしている。
まとめ的に言うと、「も」音韻の区別がある限り、通説はなかなかくつがえらないのでしょうね(学会ってそんなところでしょう)。でも、いずれにしろ、『古事記』について、本格的に論じられているのは、平安時代に多人長によって書かれた、『弘仁私記 序』までないのだから、ね。かなり今見ているものが、偽書にかなりグレーであると思うのは当然なんじゃないですかね。

古事記のひみつ―歴史書の成立 (歴史文化ライブラリー)

古事記のひみつ―歴史書の成立 (歴史文化ライブラリー)