2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

阿部将伸『存在とロゴス』

レヴィ=ストロースが『野生の思考』で考えていたような、未開社会の「野生の思考」であり、子どもたちの「野生の思考」であり、といったものは、私たち大人がほとんど意識することなく、日々の日常において行っている、なんらかの 自明性 であり、共同体の…

「津波てんでんこ」のあの日

3・11のあの日、津波が東北の海岸際を襲った日。津波てんでんこの子どもたちは高台に向かって走った。後ろから津波がやってこようとしている、まさにそのときに。 他方、大人たちは渋滞の中で動くはずのない車にしがみつき、わが家への執着に後ろ髪を引か…

ワンクリック革命

以前、ケータイのモバイルスイカを使っていたとき、いつも、ケータイをいじっていたので、そのまま、ペチっとやればいいというのは便利だな、と思ったものだが、最近のスマホは、そういった電子磁気カードを内包するオーバースペックがもったいないというこ…

ジャパニーズ・イングリッシュ

日本人が英語が苦手だというとき、日本人は別に、中学のとき習った英語の文法を忘れた、ということを言っているわけではない。そうではなく、 日本語で考えていることを、どう英語に直せばいいのかがわからない と言っているわけである。 このように考えたと…

破局噴火と一般意志2.0

このブログでは何度もとりあげてきたが、東浩紀さんの『一般意志2.0』は、その前の著作である『動物化するポストモダン』から継承する課題として「オタク」論が引き継がれている。しかし、そういった視点で見たとき、近著になる『弱いつながり』は、この「オ…

日本という「自発的隷従」国家

日米ガイドラインというのは、両国間での合意として、条約的な効力があるとされていながら、両国の大臣によって締結されるもので、国会の承認が不要だ、ということになっている。 しかし、多くの人にとって、これは何を言っているのか、よく分からないのでは…

橘木俊詔『日本のエリート』

原子力発電所の問題は、一般には「エリート」の問題と考えられた。というのは、早い話が、原発について詳しくて、電力会社やメーカーや経産省に、その原発専門として働くような人は、まず、原子力物理工学を大学の専攻にしている人ということになるだろうか…

田村秀『暴走する地方自治』

今回の大阪の住民投票は、近年においては驚くべき投票率で大阪市の「解体」がなんとか食い止められた。しかし、言うまでもなく、この大阪における大阪都構想なるものは、かなり前から、橋下大阪市長によって、訴えられていた政策であったわけで、別に、急に…

坂井豊貴『多数決を疑う』

民主主義について考えることが、一体なにを意味しているのか、が問われている。それは、例えば、社会学者のルーマンの言う「社会の複雑性」の増大に比例して、 縮減 という「言葉」が、そもそも何を意味していたのか。いや、そもそもこの言葉の「正当性」を…

自由主義から漂う「腐臭」

自由主義とは、いわば「魚の乱獲」のことと同値だと私は考えている。それぞれの、例えば寿司屋は、ネタが未来永劫欲しい。よって、各漁師は「競争」をすることになる。各漁師は、魚を取る。しかし、それを続けていくと、ある時点で、まず起きることが、 体長…

女子アナの「笑い」

西尾維新の最新刊の「悲録伝」の最後の方で、ようするに、これら主人公たちの「処女」性についての、一種の「神秘主義」的な価値感の主張をしている部分があり、私は今まで読んできて、少し残念な印象を受けた。 つまり、処女だとか童貞だとかいったことが、…

金森修『科学の危機』

安倍総理が東京オリンピックの決定のためのプレゼンをしたとき、「おもてなし」という言葉が流行語のようになった。しかし、そのとき私が思ったのは、これってようするに 接待 のことだよな、ということであった。普通の日本の文脈において「おもてなし」と…

日本国憲法...加憲「改憲の禁止」条項

ドイツ基本法第79条3項 Grundgesetz Art. 79 を参照。 「この憲法の作成時からの歴史的推移による、例えばテクノロジカルな進歩といったような場合を超えた、立憲者たちの立法時の意図である立憲精神に反する文脈の変更を意図した」ような、この「憲法の…

柄谷行人「批評とポストモダン」

最近出版された、岡本さんという人の書いた『フランス現代思想史』という本を読むと、一つだけはっきりとした「違和感」を抱く部分がある。それは、つまりは「ポストモダン」という言葉についてである。 それは、むしろ、この本が「間違っている」ということ…

長州テロリズム

さて。日本軍がなぜ敗北し、ポツダム宣言という無条件降伏を飲まされることになったのかを考えることは、この日本の戦後の出発点であったはずであるが、それは一体、どこのどなたがされたのであろうか? 私がここで強調したいのは、これが明治政府から「一貫…

原田伊織『明治維新という過ち』

ISによる首切り事件があったとき、私はそれを鼻白んで見た記憶がある。そして、安倍が「テロは絶対に許されない」と一方で言っておきながら、他方において、大河ドラマに長州テロリスト集団の親玉である、吉田松蔭を無理矢理押し込んで、うれしそうな雰囲…

小林敏明『柄谷行人論』

全共闘における、その最終段階は赤軍派による、いわば内部テロのような形によって集結した。つまり、この「観念」的な彼らの「粛清」が総括されることなしに、それ以降の未来は考えられない、という認識が広まった。 ひるがえって考えてみるに、この問題が十…