2013-01-01から1年間の記事一覧

千葉雅也『動きすぎてはいけない』

ハンナ・アレントが、ナチス以降の、この戦後社会において、大衆社会を、最も重大な問題と位置付けたとき、おそらく、現代社会は、なんらかの、 次のフェーズ に進んだ、ということを意味していたのかもしれない。 アレントが、全体主義の回避こそ、あらゆる…

東浩紀『存在論的、郵便的』

掲題の本において、著者はなぜ、デリダが後期において、非常によく分からない、いわば「神秘的」な文章を書き始めたのか(その反面において、具体的な保守的に、現実政治に積極的にコミットメントしていったのだが)、といった問題意識から、議論を始めてい…

ハンナ・アレント『人間の条件』

なぜ、ハンナ・アレントが重要なのか。それは、彼女が、ユダヤ人として、ナチス・ドイツであり、「全体主義」であり、「大衆社会」を考えたから、と言うことができる。 つまり、ある意味で、彼女が「戦後世界」の枠組みを作ったのである。 つまり、どういう…

条件付き恋愛

アニメ「WHITE ALBUM2」は、今、第3話まで来ているが、正直、第3話は意味が分からなかった。 しかし、その前に、言わなければならないことがある。つまり、そのノベライズ版を第2巻まで読んだのだが、それが私には「なにを言っているのか分からなかった」…

若杉冽『原発ホワイトアウト』

ここのところ、「原発ホワイトアウト」という、匿名の官僚が書いた小説が話題になっている。この小説は、登場人物が匿名になっていながら、ある意味、現実社会のだれのことを言っているのかが、分かるような書き方になっている。そういった形で、新潟県知事…

阿部泰尚『いじめと探偵』

私はしょせん、人間なんて、そう簡単に自分にプライドをもてるようにはならないものだ、と思いながらも、逆に、自分にプライドをもてているなら、そういった人間たちで作られる社会は、それなりに「まとも」なんじゃないのか、と思ったりもする。 というのは…

科学者とは何者か?

3・11以降の、福島第一由来の低線量放射性物質の健康影響について、安全厨と危険厨による、果てしない、議論が続いているのだろうが、ここでは、その成否ではなく、そもそも、科学者とは何者なのか、について書いてみたい。 そもそも、科学とはなんなのか…

ある固有性

ラノベ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」において、ぼっちの主人公、比企谷八幡(ひきがやはちまん)が、なぜ、由比ヶ浜結衣(ゆいがはまゆい)に好意をもたれたのかは、彼女が飼っている犬が交通事故に会ったとき、八幡が救ったからであった。 …

酒井智宏『トートロジーの意味を構築する』

私が文系の人たちの書く文章に違和感をもつのは、結局のところ、その「饒舌」は、なんらかの新しいことが言えているのか、という疑問であった。 いろいろ、饒舌に語ったところで、結局のところ、「AはAである」ということしか言えていないのであれば、そう…

ある非対称性

私は、米澤穂信の「愚者のエンドロール」という推理小説について、以前に書いたことがある。この小説が興味深かったのは、折木と入須の関係が、とても、現代社会を考察するのに、多くの示唆に富んでいるように思えたからである。 「探偵をしてほしい」(と言…

低線量被曝問題は結局のところ、どう考えればいいのか?

前回、地球温暖化の話を考えていて、つくづく、地球温暖化と低線量被曝の話は「似ている」と思った。つまり、これは、 予測 の問題だからだ。私は、3・11の福島第一原発事故による、晩発性の人体への影響がどういったものになるのかを、私たちの「科学」…

江守正多『異常気象と人類の選択』

私たちが「科学」と呼ぶとき、それは、どちらかというと、「デカルト」のような「姿勢」に関係して主張されてきた。つまり、 反証可能性 対照実験 つまり、だれでも、その実験を反復することによって、相互チェックによって、その「結果」を反復できることで…

熟議とは何か?

私たちが金融機関からお金を借りようとしたとき、まず言われるのが、「担保」である。つまり、基本的に人間は、 信用されない のである。そのことには、いろいろな意味がある。基本的に、人はどんなに注意をしていても間違うことがある、という意味でもある…

田村哲樹『熟議の理由』

私は、どうも、この本が言っていることが、よく分からない。というか、その最初から話し始めている「前提」がよく分からない。 それは、私が読者として、中途半端だから、ということより、掲題の著者がおそらくもっている、ある「共通認識」が今一歩、自分の…

ナスティ・チルドレンの「さみしさ」

インターネットのすごさは、やはり、ネット動画において、考えさせられる。ネット動画のすごいところは、いろいろな二次創作が行われていることだけでなく、さまざまな 過去 の動画コンテンツが、どんどんアップされていることではないだろうか。昔のライブ…

日野行介『県民健康管理調査の闇』

掲題の本は、ある毎日新聞の記者が、福島県が行っている、県民健康管理調査に「秘密会」があることを発見していく過程を記した本である。 県民健康管理調査は、非常に重要な使命をもっていた。3・11による福島第一の事故によって、福島県民の多くが大小さ…

仲正昌樹『今こそルソーを読み直す』

ルソーの社会契約論は、それ以前の「不平等論」をふまえた形になっていることが注意がいる。 恒久的な戦争状態では、ホッブズの言うように生命の危険は共通であるが、財産の危険はそうではない。富者ほど失うものが大きい。そこで富者っちは、あたかもみんな…

信用できない

ある官僚が匿名ブログで、「復興は不要だと正論を言わない政治家は死ねばいい」と書いていたことがばれた記事が、話題になっている。 「復興は不要だ」との書き込みは、2011年9月のもの。被災地が「もともと過疎地」だというのが根拠だ。今年8月には、…

住友陽文『皇国日本のデモクラシー』

私たちは、歴史を中学高校と習い、明治における、近代化において、最初は、「制限選挙」であったことを知っている。女性は選挙権がなかったとか、資産家しか選挙権がなかったとか。 しかし、よく考えてみると、なぜ「普通選挙」になったのであろうか。その理…

天皇制と私たち

ここのところ、木村政彦の評伝の本を読んでいろいろ書いているのだが、彼は戦前の産まれでありながら、ほとんど天皇制にやられていない。日本人でありながら、ほとんど、天皇制に「従って」生きていた、という姿が見えない。 これってなんなのだろう、と思う…

貧困と思想

いつの頃からは、人々は貧困、つまり、自らが「飢えて死ぬ」ということを考えなくなった。それは、日本の高度経済成長の「成果」なのか、私には分からない。しかし、そもそも貧困について考えない思想など、いらないのではないかとさえ、言いたくなる。 人類…

信仰と近代法

例えば、キリスト教における「信仰」と、近代法の、最も決定的な違いはどこにあると言えるだろうか。 棄教を迫られたとき、神を否定することは重罪である。表向き棄教するだけでも、心から棄教する者と同罪である。迫害の短い苦しみの中で、快く殉教を受け入…

山本博文『殉教』

お金持ちの人にアンケートをとったら、子供の頃に親から「いい人」になれと教育を受けた、と答えた人が多かったというネタから、 お金持ちになるために「いい人」になろう(倫理的な動機からなる「いい人」、ではなく) と主張しているブログがあった。つま…

山本博文『切腹』

江戸時代、非常に多くの武士が切腹をした。そう言うと、その「あまりの過激さ」に当時の日本人は、毎日、なんか変なものを食べていて、頭が狂っていたのではないか、とさえ言いたくなる。それくらい、あまりに当たり前のように武士は、切腹という自死をして…

加藤徹『怪力乱心』

儒教のおける教典は「経書」と呼ばれている。地球儀で言えば、「経度」だ。じゃあ、「緯度」は何か。それが、「緯書」だ。しかし、緯書と言われても、あまり、聞き覚えのない言葉であろう。 つまり、経書は、ある決定されたテキストであるが、緯書は、それを…

スポーツでは「ない」

そもそもなぜ、「今ごろ」木村政彦なのか、というのは多くの人が思うことなのではないだろうか。 アメリカのデンバーで第一回UFCが開かれ、優勝したホイス・グレイシーが「われわれグレイシー一族にとってマサヒコ・キムラは特別な存在です」と発言し、こ…

増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』

戦後すぐの日本のスーパースターであった力道山が、38歳の若さで、若いヤクザとのごたごたで刺されて、死んだ後、昭和が終わり平成となり、力道山が多くの人の記憶から忘れられてきた今において、それは当然のこととも思えるが、しかしなぜそうなのかと考…

なぜ福島第一は事故になったのか?

たとえば、福島第一原発も、柏崎刈羽原発も、両方とも、東京電力のものであり、「すべて」関東地方に送電されていて、福島県も新潟県も、東京電力の電気を まったく使っていない ということは、あまりにも「明らか」なことであるのに、なぜか東京人は、その…

アイと「もこっち」

ラノベ「神さまのいない日曜日」は、現在、第8巻まで進み、そのあとがきによれば、次巻で最終回となると予告されている。 しかし、私はこの「あとがき」なる「慣習」が嫌いだ。それは、作者が作品世界を 自分の意図通り に「読ませよう」という「メタ」の言…

児玉龍彦『放射能は取り除ける』

一つ前で紹介した本には、一つ、いいポイントが書いてあると思ったところがある。 「(自然被曝以外に)生涯で通算100ミリシーベルトを被曝すると癌で死亡しるリスク(確率)が0.5パーセント上乗せされる」という「公式の考え」には、被曝した人の年齢…