2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「死にたければ一人で死ね」は非難すべきか?

今回の川崎登戸殺人事件も、少しずつ、事情がわかってきたようだ。 日テレ、スッキリで、犯人の動機についてかなり核心的なところに迫っているスッキリ「犯人は実の子ではなく、家族には二人実の子がいて、犯人1人だけ厳しく躾けられて差別されていた。実の…

G・マルチン『カント----存在論および科学論----』

さて。カントは「どこから来たのか」。この問いは、なぜカントがあのような議論を行ったのかを問うものであるし、なぜあのような「差異」「差分」を示すものだったのかを問うものでもある。 そしてそれは、おそらくは ライプニッツ なのだ。なんだ、当たり前…

ホームで強い?

よくプロ野球や、プロサッカーで、ホームの試合で強いとか、ホームで今節負けていない、とか言って、「ホルホル」しているチームがある。確かに、ホームでの試合では、多くの地元の観客の応援によって、なんらかの やりやすさ があることまで否定したいとは…

ジェームズ・レイチェルズ『ダーウィンと道徳的個体主義』

ところで、前回紹介した、スコット・ジェイムズの『進化倫理学入門』の翻訳は、児玉聡さんという方で、たしか、ちくま新書で『功利主義入門』という本を書いていらして、そこで、 道徳と倫理を「同一視」する ことから、議論を始められていたことを思い出す…

偽善は「悪」か?

論語に 巧言令色鮮仁(こうげんれいしょくすくなしじん) という言葉があるが、私たちは、どんなに勉強ができて、頭の良い人でも、やたらと自分の演説に酔って、一人で話し続けて、他人の話を聞かない人を 警戒 する傾向がある。それは、結局のところ、人と…

スコット・ジェイムズ『進化倫理学入門』

そもそも、進化論は「比喩」によって、リテラルには、理論が構築されている。つまり、遺伝子が、まるで「意志」があるかのように、他の遺伝子との「戦い」に「勝って」、「生き残ってきた」かのように説明する。つまり、この進化論の最初の基礎的な部分にお…

ブルジョア民主主義の特徴

お金持ちは、自らの所有しているその「お金」を、国家に奪われたくないわけで、そのためなら なんだってやる わけであろう。それは当然、 民主主義への介入 も含意する。しかし、そもそも国家とは、国民の財産を再分配する組織である。それが民主主義、「み…

神聖性と人間死の軽視

ニーチェによる、近代批判は、よく考えてみると「恐しい」。なぜなら、なにかの「価値」がある、という認識が、結果として、 カント への軽蔑、カント哲学の放棄へと繋がるわけだけれど、つまりは、「道徳」「倫理」といったような ルール を唾棄し、それの…

ジャック・デリダ『精神について』

掲題の本は、デリダがハイデガーに言及した中でも、比較的まとまった論考になっている、ということで注目されてきた。つまり、デリダはハイデガーをどのように評価しているのかについては、例えば、前回紹介したウォーリンの本のような、ハイデガーの仕事を…

リチャード・ウォーリン『存在の政治』

ハイデガーは、直接には、政治哲学に言及していない、とされている。しかし、前期から中期にかけて、ナチへのコミットが深く知られるようになって、本当にそうなのか、が疑われるようになる。普通に考えて、この二つが 別物 というのは、ありえないんじゃな…

島薗進『神聖天皇のゆくえ』

以前、このブログで、東浩紀先生の、憲法学者の木村草太さんへの批判をとりあげて、それに批判的に検討したことがあった: 憲法9条と自衛隊の存在が矛盾しているのは小学生でもわかることで、そういうのを放置してるからこの国はだんだんおかしくなってくる…

ジョン・スティルウェル『逆数学 定理から公理を「証明」する』

大学に入った時、まず、最初に数学科で習うのが、解析学と線形代数なのだが、その解析学の教科書として使っていたのが、 杉浦光夫『解析入門1』 解析入門 ?(基礎数学2) であった。そして、この最初の方の章の最後の練習問題で、いわゆる 実数論 と呼ばれる…

牧野英二『カントを読む』

掲題の本は、まあ、カント論なのだが、副題が「ポストモダニズム以降の批判哲学」とあるように、現代思想への、カントの影響をにらみつつ、まあ、現代の事象に対する批評を行っている、といったところが特徴だろうか。 しかし、その場合、どうしても避けては…

B.C.ファン・フラーセン『科学的世界像』

掲題の本は、いわゆる「科学哲学」の文脈で有名な「科学的実在論争」の一つの極である、「反実在論」を代表する一つの立場(掲題の著者はそれを、「構成主義的経験論」と呼んでいる)について説明された、代表的な本である。 この場合、「科学的実在論」とい…

数学は宇宙の進化なのか?

まあ、これも以前にこのブログで自分で提起した課題ではあるのだが、別に、それについて細かく調べた結果が出たとか、そういったことではない。 そうではないけれども、少し最近思ったことを書いておこうか、といった、いつもの感じの忘備録である。 たとえ…

檜垣良成「綜合的判断と実在性」

なぜカント哲学が、あんなに分かりにくいのかと考えれば、ようするに私たちが、当時のカントが直面していた哲学の状況に一切、無知だから、ということになる。 というか、素朴に考えて、なんであんなにまでしなければならないのかは、少しも自明ではないわけ…

優しい世界

御子柴善之の『カント哲学の核心』という本があって、私は、今、日本で読めるカント入門としては、一番いいと思っているが、それ『プロレゴメナ』に基いて、かなり丁寧に説明をされているということで、この難解なカントの文章を、かなり分析されている。 そ…

みゆはん「エチュード」

アニメ「八月のシンデレラナイン」は、以前からスマホゲームの方の展開が続いてきて、今回のストーリーは違っているようだが、アニメ化となっている、ということのようだ。 こんな、ただ野球をやっているだけのアニメのなにがおもしろいんだ、と思われるかも…

戸田山和久「自然主義的認識論と科学の目的」

こちらは、前回の論文の、後編といった位置付けのようで(2005年の雑誌)、前回、自然主義に対するさまざまな反論に対する応答がされたわけであるが、その追加の応答がある、というのが特徴だ。 掲題の著者は、この二回目の論文において、改めぜ自らの立…

戸田山和久「哲学的自然主義の可能性」

掲題の論文は、2004年の雑誌「思想」に掲載されたものであるが、日本において、この 自然主義 について、かなり包括的にそのプロジェクトについてまとめられたものと考えている。そういう意味で、そもそも多くの人が「自然主義」という言葉を使ってなに…

カント批判哲学は自然科学をどう考えたか?

前回は問題提起だけして終わってしまったんだけれど、まあ、以前からこのブログで書いていることでもあるんだけれど、掲題の問題について、忘備録敵に、改めて整理しておきたい。 まず、直截に、カントが自然科学と自らの批判哲学との関係をどう言っているか…

丹治信春『クワイン』

掲題の本は、ほとんど日本における、分析哲学者のクワインの印象を決定している、それくらいの影響力をもって読まれてきたのではないだろうか。 しかし、この本を読むとよく分かるが、クワインが戦っているのは、論理実証主義者であり、実際には、論理学者の…