2017-01-01から1年間の記事一覧

「自由意志」は存在するか?

私たちはよく、「自由は存在するのか?」という問題を考える。つまり、「意志」は本当に自由意志なのか、というわけである。私は確かに今、なにかを「選択」したのであって、その選択にもとづいて行動したために、なんらかの「結果」が発生したわけで、だか…

「観光客の哲学」とセカイ系

つい最近、マーク・リラという人の、『シュラクサイの誘惑』という本を読んだのだが、これが非常に興味深い内容だった。それは、例えば、以前ここで紹介した、リチャード・ウォーリンの『ハイデガーの子どもたち』のようなジャーナリスティックな観点で、ハ…

民主主義のパラドックス

民主主義には、一つのパラドックスがある。それは、奴隷国家は民主主義国家の「利益」を享受できる、ということである。 今、アメリカは、トランプ大統領のロシアとの関係で、大騒ぎである。まず、大統領選挙である。ロシアは、この選挙において、どうやって…

南京大虐殺の今日的問題

今期のアニメ「クジラの子らは砂上に歌う」をここまで見てきて、衝撃を受けているわけだが、それは、このアニメが構造として、 南京大虐殺 の形式的な再現となっていることに気付いたことだ。というのは、正直言って、原作の1、2巻を読んでいても、いまい…

「観光客の哲学」における家族

東浩紀先生の「観光客の哲学」は本人自称、3万部が売れたとかで、自称大ベストセラーみたいに言っているようだけど、それは本当に売れたの部類なのだろうか? まあ、こういった系統の本としては売れた方ということなのだろうが、私にはモヤモヤが残る。 モ…

個人の「幸福」は本当に人生の「目的」か?

功利主義は、有名なベンサムの「人々の幸福に和の最大化」を目的とするとなっている。しかし、他方でベンサムはその「幸福」と人々の「欲望」をほとんど同値であるかのように述べたために、この二つを区別するのか同一視するのか、で功利主義内での論争がず…

八木雄二『裸足のソクラテス』

ソクラテスといえば、古代ギリシアの現代でも、その言葉が使われる「哲学」の始原のような存在として、今でも言及されるわけだが、なぜそうなのかといえば、言うまでもなく、プラトンの多くの著作の「対話篇」の主人公がソクラテスだからだ。 ところが、その…

フランソワ・ジュリアン『道徳を基礎づける』

孟子の有名な言葉に 今にも井戸に落ちようとしている子供を目のあたりにすれば、誰もが恐怖の渦に巻き込まれ、助けようと手を差し伸べる というのがある。いわゆる「惻隠の情」というやつだが。これを、掲題の著者は「道徳の基礎」と考える。つまり、掲題の…

哲学ではなく「セオリー」

この前のAFCの浦和の戦いは、強力な攻撃陣をもつ中国のチームに、まさに「デュエル」で、つまり、守備でハードワークをして勝った試合だったわけで、日本代表のオーストラリア戦を思い出させるような展開であった。それを、ハリルホジッチ監督は「モダン…

憲法改正論議の虚妄

前から不思議に思っていたのだが、近年の日本の憲法改正論議は、一体、どこの誰が 本気 で言っているのだろう? つまり、この議論は本当に実体があるのかが、ずっと「怪しい」と思っていたのである。 その理由について、安倍政権が集団的自衛権の一部行使容…

日本政治の陰謀についての仮説

日本の政治において、衆議院選挙は、国会の見取り図を決定するという意味で重要である。つまり、日本の政治を 支配 したいと考える人なら、どうやってこの衆議院選挙を 結果 として勝利するかについて、綿密な計画を立てるであろう。なぜなら、この衆議院選…

二大政党制のジレンマ

日本の衆議院選挙が、小選挙区制を選択してから、一度民主党に政権が移ってから、また自民党に戻ってそれから、一度も自民党以外に政権が移っていない。 そもそも、小選挙区制は政権交代が起きやすい制度ということで始まったはずであるが、なぜ起きなくなっ…

東浩紀先生は「棄権しよう」と訴えたのか?

今回の東浩紀先生による「棄権」キャンペーンに対する炎上は、日増しに勢いを増しているわけであるが、ここではもう少し、私なりの整理を行ってみたい。 とりあえず、もっとも批判の矛先が鋭い山崎雅弘先生の発言を見てみよう。 前にも書いたが、この古市憲…

土屋信行『首都水没』

3・11の東日本大震災のとき、一つ、私の中で違和感を覚えたことがあった。それは、そこでの多くの死者の直接の原因は、あの 高波 であり、原発事故についても、この高波との因果関係はまったく否定できなかった(実際、福島第二原発の方は高台に作られて…

河村小百合『中央銀行は持ちこたえられるか』

今回の衆議院選挙は、民進党の希望への吸収と立憲民主党の結成で、すべての話題がそっちにもって行かれた雰囲気があるが、与党がなんとか北朝鮮の脅威を強調したいとやっきになっている一方で、もう一つ、どうも雰囲気が変わってきている、と思われる傾向が…

東浩紀先生の政治理論

うーん。ここのところの、東浩紀先生の「炎上」案件は、これを非難している人たちの気持ちは分かるのだが、そして、東浩紀先生自身がその意味をほとんど説明していないという、あいかわらずの「ポストモダン作法」であることが余計に混乱を拡大させているの…

自民党の勝利で「いい」と思っている人たち

今日のニュースで、小池百合子が地方に遊説に行っている、地方で演説を行う、といったことをやっていたが、小池百合子が衆議院選挙に立候補しないことが、こうして正式に決まった時点で、急速に、希望の党への国民の関心が失われている。 おそらく、前原さん…

橋本剛『マルクスの人間主義』

小池百合子は「自分は自民党」だとか言っているらしいけどw、なんでこいつは、自民党から出馬しないんだ? いい加減、だれかこの女を黙らせろよ。しかも、とうとう 年金廃止 生活保護廃止 雇用保険廃止 まで、言及し始めたぞw 小池百合子代表は公約発表会…

上西議員のサッカー発言に対する批判

さて。少し前の炎上話であるが、上西小百合議員が浦和レッズとドルトムントの親善試合を見に行って、その感想をツイッターでつぶやいてから、ファンとのやりとりから下記の発言となり炎上した問題について、なぜ彼女はここまでハブにされたのかを考えてみた…

多数決と多数者支配

よく、民主主義とは「多数決」だ、といった議論がされることがある。つまり、数が多いさえすれば、と。しかし、そう考えるには、あまりに多くの 政治システム は煩雑なのではないのか、といった疑問がわいてくる。例えば、 独裁 について考えてみよう。言う…

映画「ドリーム」を見て

映画ドリームを新宿で見たのだが、とにかく混んでいた。三人の黒人女性が主人公の、アメリカのNASAがソ連と宇宙開発競争をしていた時期の、まだ人種差別がおおっぴらに行われていた時代のアメリカを描いたものであるわけだが、ある意味、どうやってアメリカ…

映画版「響けユーフォニアム」

京都アニメーションの映画版「響けユーフォニアム」は、原作でありテレビ版の範囲での、主人公の黄前久美子(おうまえくみこ)と先輩の田中あすか(たなかあすか)との関係の部分にフィーチャーした内容となっているわけだが、原作がさまざまな主題をとりあ…

小池百合子と「イスラム教」

ここ何日かの、政界の動きで、小池百合子が民進党を吸収して、自民党と対決姿勢を示し始めたことで、ネット界隈の自民党応援「工作員w」界隈は混乱が起きているようで、さまざまな小池の「問題」なるものが、議論され始めた。 そこで、都知事選挙で、ネット…

金慧『カントの政治哲学』

さて。カントの社会契約論こそ、ジョン・ロールズなどの近年の社会契約論に影響を与えたわけであるが、その特徴とはなんだろう? だとすれば、ネーションについても同じことが言えないだろうか。国民(ネーション)はふだん、政治の合理的な思考に基づき行動…

非人間性の文化史

少し今までのまとめのような形で、長めに論じてみたい。 例えば、ラノベ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」と、ラノベ「ようこそ実力至上主義の教室へ」は似ている。それは、主人公の比企谷八幡(ひきがやはちまん)と綾小路清隆(あやのこうじき…

「主体」の魔術師

ルソーの社会契約論を見ていると、おそらく、最もこの議論の鍵になる場所が、ここではないのか、と思うところがある。 主権を譲り渡すことができないのと同じ理由によって、主権は分割できない。意志は一般意志であるか、そうでないかのどちらかである。すな…

社会契約論は自分が産まれる前から「決まって」いたのか?

ルソーの社会契約論という論文を読んでいると、これは、社会契約の話ではなく、「宗教」の話を書いているんだろう、といったことを、どうしても直観的に言いたくなる。それは実際に読んでみられれば分かるのではないかと思われるが、実際に、最後の方では、…

グーグル社の女性差別的発言社員の解雇

さて。グーグル社が自社の社員が、女性差別的発言をしたことにともなって解雇をした件については、まあ、当然の結末という印象も強いわけだが、興味深いのは、ある意味、 いつものメンバー が、この議論に参戦している、というわけで、俄然、興味がわいてき…

悪魔による宣戦布告

いつものように、東浩紀先生の『観光客の哲学』から始めるわけだが、この本でなんでこんなことを突然言い始めているのか分からない文章がある。 永遠平和の体制に参加する国は、専制的であってはならない。国民が王に盲目的にしたがう国ではなく、自分たちで…

サッカー日本代表の監督は交代すべきか?

さて。日本はオーストラリアに勝って、ロシアW杯への切符を手にしたわけだが、この試合を前後して、さまざまな議論が噴出していた。それは、監督のハリルホジッチを交代させるべきか否かについてである。 このことは、非常に興味深い印象を私に与えた。そこ…