2009-01-01から1年間の記事一覧

スディール・アラヴィ・ヴェンカテッシュ『アメリカの地下経済』

私は、今この本を、たいへん興味深く読んでいる。 著者は、アジア系の人であるが、シカゴ大学の大学院の頃から、シカゴのサウスサイド地区のゲットーを、論文に書いていた、という。しかし、ゲットーとは、ワーキングプアがっ長い間そこから抜け出せないまま…

山田昌弘『迷走する家族』

私は、ちょっと前に、自殺保険という表現をした。しかし、これは、少し正しくない。最近も、法律は改正され、生命保険は、2年以内というガードをかけて、保険金支払いのガードをされていると言う。当然、業界も、さまざまな問題に、無関心ではおれない、と…

さらちよみ『ヒのカグツチ』

(一つ前に、非常に重要な問題をとりあげただけに、その後、こういった、「どーでもいー」ことを書くのは、少し、気がひける。自分にはまだ、時が熟していないのだろう。自分の非力をわびたい気持ちだ。いつか、その日が来るのを待つしかない、そんな気持ち…

李珍宇『罪と死と愛と』

つい最近、大変に、重要な本が出版された。それが、 越境の時―一九六〇年代と在日 (集英社新書)作者: 鈴木道彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/04メディア: 新書購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (30件) を見る である(特に、その、第二章…

ピエール・ルミュー『無政府国家への道』

最近は、自由主義は、すこぶる、評判がわるい。彼らのせいで、こんな不況になってしまって、どーしてくれるんだ、って。 しかし、経済とは、循環するものですから、好景気のときもあれば、不況のときもある。ある経済学者は、経済とは、ネズミ講、だと言った…

稲葉剛『ハウジングプア』

著者は、家がないことこそ、すべての問題の元凶である、と言う。 お金がないことも、本質的でない。食事にありつけないことも、本質的でない。なによりも、屋根の下で寝られない、家の中で暮らせないことが問題なんだ、と。 たしかに、考えてみれば、こうや…

中島みゆき賛歌

TUTAYA の、CD 5 枚 1000 円、につられて、大人借り、してしまった。昔のフォークなんかも聞いたりして。 中島みゆきといえば、最近で言えば、NHK の「プロジェクトX」だろう。この番組は、ちょっと特殊であった。日本の労働者の、武勇伝を、フューチャーし…

ベル

人間は人間をどう見ているのだろう。 この質問の意味は、こうだ。 人は、ある人に、惹かれる。恋愛でもいい。もっと別の、理由でもいい。学問的な、師匠と弟子でもいいだろう。フロイトにとっての、ユングのように。しかし、弟子というものは、多くの場合が…

栗原剛『佐藤一斎』

私は、ちょっと前に、江戸時代の日本を、幕府や藩の「存在しない」、村「国家」群、と呼んだ。このことは、別に、ちょっと変わったことを言ってみたくて、かっこつけたということではない。たとえば、徳川幕府は、別に「政府」ではない。あれは、ただの「イ…

池田信夫『希望を捨てる勇気』

日本のバブルは、何十年か前に、はじけたが、「世界」のバブルは、つい最近、はじけた。それが、リーマンショックであった。 高度成長期は誰にでもチャンスはあり、一生懸命働けば報われるという希望があったが、もう椅子取りゲームの音楽は終わった。いま正…

奥村宏『倒産はこわくない』

奥村宏さん、はずっと、日本企業批判を行ってきた。彼は、あの、ジャパン・アズ・ナンバーワン、と言われた頃も、一貫して変わらず、日本企業の問題点を指摘し続けた。 こういう人の指摘は、貴重である。 エンロンの倒産は、多くの人たちに、株式会社、とは…

亀山郁夫『『罪と罰』ノート』

光文社の、ドストエフスキーの、文庫を翻訳しているのが、掲題の著者であるそうだ。 私は、今でも、「罪と罰」、こそ、何世紀かの間続くこの、小説文化の中において、人類史上の、最高傑作、と言ってもいいのではないかと思っている。 しかしそれは、非常に…

丸鬼太郎『"超"格差社会・韓国』

最近は、東アジア共同体、でかまびすしい。日中韓、に、北朝鮮(、モンゴルも?)、そして、東南アジア、各国になるのであろうか。 おもしろいのは、このアイデアの、日本側の提唱者が、とにもかくにも、「経済的要求」から、来ていることだ。日本の、ここ何…

NHKスペシャル「原発解体」

どうも、世界中で、おかしなことになっている。 さかんに、また、「悪魔の搭」、原子力発電所の建設ラッシュ、が始まっている。 なぜこんなことになっているのか。 そもそも、地球温暖化のキャンペーンが、原子力発電関係者によって始められたことは、よく知…

白洲正子「祖父の面影」

最近は、白洲次郎のドラマが、NHK で放送された関係もあって、本屋でも、ちょっとした、特集コーナーがあったりする。彼の奥さんだった人が、白洲正子、ですが、実は、ずっと、この二人は、さまざまな伝説とセットになって、ブームが続いてきた。 特に、白洲…

管正広『マイクロファイナンス』

私は、自称経済学者の、人間性を疑っている。彼らは、人格的に問題があると思っている。例えば、セーフティネットは必要と言う。足りなければ、セーフティネットを増やすことは、やぶさかでない、と言う。しかし、彼らは不思議なことに、「具体的に」この国…

アナイス・ニン『アナイス・ニンの日記 1931-34』

人類が生まれてから、最大に「重要な」女性を、一人だけあげるとするなら、間違いなく、アナイス・ニン、であろう。 ボーヴォワールは、ある年代の女性に、ショックを与えたが、こちらは、むしろ、たかだか、「時代的な存在」にすぎない。まったく「足元にも…

NHK BS世界のドキュメンタリー「山の分校」

中国は、BRICs と言われ、成長著しい地域と考えられている。 しかしそれは、沿海地方の話である。 沿海地方は、さまざまな、減税特区によって、早晩、日本に追い付き、追い越すであろう。しかし、内陸部の、成長は、止まり続ける。 この現状を、どう考えれば…

C・ダグラス・スミス『ガンジーの危険な平和憲法案』

ガンジーほど、あの、第二次世界大戦、を生き抜いた人の中で、変な、人はいない。もしかしたら、彼だけは、あまりにも、生きる時代が早すぎた人だったのかもしれない。 私たちは、第二次世界大戦、の経緯をみているとき、あれっ、と思うことがある。 それは…

ある空想

私は、前の記事を書いた後、ある、インスピレーションのような突飛な考えが思い浮んだ。 それは、冉蘭先生、が、勉強をがんばった、ある男の子に、鉛筆削り、を、あげた場面を思い出してであった。 その子は、次の日、それを失くすのだが、あるクラスの女の…

Dragon Ash「Grateful Days」

この曲をとりあげないわけにはいかないのであろう(ただ、自分が、あまり興味がないもので。てへへ)。オリコンの一位になったんですかね。ただ、彼らの、ベストには入っていない。ウィキを見るといろいろ書いてあるけど、よく知らない。PV がさまざまにとり…

村井紀『反折口信夫論』

前回は、折口信夫、を天才とまつりあげましたが(礼賛したそばから、こうやって、批判本を紹介できることが、うれしいですね。科学? 昨日言った真実なんて、今、この場で、全部、焼き捨ててやるよ)、掲題の著者は、まえがきで、以下のように言う。 冒頭に…

プルードン『プルードン・セレクション』

一体、現代を特徴付けるものとは、なんなのであろう。 ハイデガーは、科学文明を疑問視し、その、技術信仰への、不信を語った。近代科学技術の進歩、コンピュータの進歩は、あらゆる「インフラ」、の、「自動化」を意味する。あらゆる、この人類の、人類生活…

人生の意味

「コジマ」は、主人公の「僕」のように、たんに、いじめられるのではない。 彼女がどんなふうに考えたか。その、彼女の言葉に、耳を傾けてみようではないか。 「わたしたちは、君の言うとおり、........弱いのかもしれない。でも弱いからってそれは悪いこと…

川上未映子『ヘブン』

私は、彼女の、いい読者ではないが、今回は、読んでみた(また、いつものように、けっこう、ネタバレ、でしたね。気をつけてください)。 中学生の、斜視の「僕」は、子供の頃は、好意的に、自分に接してくれた時期もあった、二ノ宮を中心としたグループ、つ…

石川公彌子『<弱さ>と<抵抗>の近代国学』

最近は、けっこう、チャレンジング、な、読書をしてきたものだ。 つい最近も、本居宣長、にチャレンジングに、アタックしたものだ(なんにもしてないけど)。 以前も書いたが、いずれにしろ、国学は、宣長、篤胤、以降、大国隆正のような、ほとんど儒教と差…

長谷川亮一『「皇国史観」という問題』

日本の戦後が、戦中の「焚書」から始まったことは、戦後のこの国の国民に大きな影響を与える。 この国の国民が、戦後、不戦の誓いを立て、世界平和のために、一心を捧げてきたことは、一方において、立派なことであろうが、他方において、それが、その国の過…

コリン・クラウチ『ポスト・デモクラシー』

掲題の本のタイトルの話に入る前に、著者は、ある問題提起をする。 まず一九九〇年代後半には、先進工業国の大半で、つぎのようなことが明らかになりつつあった。どんな政党が政権に就こうと、国の政策は富める者の利益になるよう一定の圧力が継続的にかけら…

涙のふるさと

涙が子供のものだとするなら、大人の涙は、その「ふるさと」から、来る。 探さなきゃね君の涙のふるさと 頬を伝って落ちた雫がどこから来たのかを (BUMP OF CHECKEN「涙のふるさと」) 君は、そこに行かなきゃ。 だって、「彼」が、そこから、会いに来てく…

田中康二『本居宣長の大東亜戦争』

今さら、言うまでもないことであるが、国学と、水戸学、は、まったく「違った」ものである。 本居宣長、は、漢意、を批判したのであり、それを受けて、後期水戸学は、宣長の、皇室を無上のものとする議論に、一目を置きながら、儒教徳目、への、無理解を批判…