2012-01-01から1年間の記事一覧

片岡剛士『円のゆくえを問いなおす』

日本経済の問題が、「デフレ」であると語られて、久しい。失われた20年から、はて、何年たったであろうか。 リーマン・ショック以降、わが国は急激な円高に見舞われました。 ドル/円レートでみると、2011年は過去最高値を更新し続けた年でもあり、1…

和田司『吉本隆明『共同幻想論』を解体する』

私は別に、ここで、吉本隆明の社会理論を考えたいわけではない。つまり、もしそういうものがあるとしても、興味はない。 そもそも、吉本隆明は非常に長い間、日本の文脈において、発言し続けた。古くは、60年安保から、老眼のため文字が読めなくなっていた…

白井聡「永続敗戦論」

私たち日本人は、素朴に「戦後」という言葉を、使う。しかし、もしその言葉を使うことに違和感をもたないなら、じゃあ、どうなったら「戦後」が終わるのか、のアイデアがなければならないように思われる。 「戦後」でなくなる、とは、どうなることなのか。 …

韓国大統領の止まらない本音

韓国大統領が、天皇が訪韓する場合の、天皇の謝罪の「やり方」に、公(おおやけ)の場で、「注文」をつけたことが、日本の国政の場で、問題になっている。 まずは、この大統領が実際に何を言ったのかを、「全て」オープンにさせることが最初であるだろう。「…

地方への忸怩たる思い

地方は、完全に自動車社会になっている。それは、言わば、「彼ら」が望んだとこであったのだと思う。もちろん、こういった言い方が、なんらかの彼らの真実を言い当てている、と言うつもりはない。 しかし、私が言いたいのは、事実として、地方は自動車をもっ…

武田知弘『生活保護の謎』

掲題の新書は、生活保護という日本の制度が、今、どういった状況にあるのかを、現場レベルで、丁寧に説明してくれている。多くの日本人が知らないだろう、かなり、細かい部分まで説明されている。 日本の有識者は、よくセーフティーネットという言葉を、水戸…

山森亮『ベーシック・インカム入門』

大阪維新の会が、政策の一つとして、BIの「検討」を、かかげたことで、この日本においても、BIへの注目が集まり始めている。 しかし、そこでのBI論の要旨は、ようするに、BIやれば福祉が削減できる、という、かなり「えげつない」話にしか聞こえない…

いじめという「傷」

私は、成熟だとか成長だとかいう言葉を聞くと、なんとなく虫酸が走るときがある。どうしても「アンビバレント」な感情が内側からわいてくる。もちろん、こういった言葉こそ、ヘーゲル哲学的なアイデアにとって、最も重要なキーワードであることを分かった上…

丸山眞男「『忠誠と反逆』合評会コメント」

今週のアニメ「戦国コレクション」の今回の主人公、吉継は、毎日、工場に通い、オートメーションの流れてくる缶詰の蓋を閉める作業を行う女の子。毎日、工場長に失敗を怒られる日々であり、同僚がボーリングに行くのに、一緒に行きたいと言いだせない、自分…

遠藤慶太『東アジアの日本書紀』

私たち日本人にとって、日本書紀という書物は、一言で言えば、「謎」の塊のような存在である。 この漢文で書かれた書物は、日本の「正史」として、最初にして、唯一の存在というのは、一般に「正史」とはそういうものであることから、理解できなくはない。し…

鶴見済『脱資本主義宣言』

(完全自殺マニュアルの作者が、こういった本を書くようなことを考えてきていたというのは、ちょっと、意外な気もしたが、ある意味、これが、著者の論理的帰結だったのだろう。バランスよく、よく考えて書かれている印象を受ける...。) 利便性と浪費は、ど…

ヨアヒム・ラートカウ『自然と権力』

(掲題の本はまだ、前半しか読んでませんが、いったん、まとめます。) 柄谷さんの『<世界史>の構造』は、人と人の関係を「交換」というアイデアによって整理していくことで、世界史を再解釈するような仕事であった。この仕事は、どこか、ヘーゲルの歴史学…

ツイッター民の「作法」

私はツイッターの特徴は、けっこう気軽に人々が自分がつぶやいたコメントを「削除」しているところじゃないかな、と思う。私はここに、ツイッター民の 見識 を見る。たしかに、変なことをつぶやいたから、その「謝罪」は必要かとか、「責任」はないのかとか…

永瀬伊織の真に描かれるべきだったもの

ラノベ「ココロコネクト」の5巻以降を最後まで読んでみたが、私がもった印象は、4巻までと、ちょっと変わったなー、といったことだった。 しかも、その路線変更が、あまり、うまくいっていない。その辺りが、6巻までで終わりとしなければならなかった事情…

坂本龍一さんの「たかが電気」

坂本龍一さんが脱原発デモで行った一連の発言の中に「たかが電気」という言葉があったことを切り取って、デマゴーガー産経新聞が「中傷記事」をでっちあげた。 私はこの内容は、十分に「名誉毀損」にあたると思っている。 特に、坂本龍一さんというある世代…

「おおかみこどもの雨と雪」

こういったアニメを「どのように」見るのか、というのは、その人「そのもの」をよく表すんじゃないだろうか。 私には、むしろ、このアニメは「前半」が、まるで、他人事のように見れなかった(というか、東京に住んで働いている若者はだれもが、そう思ったん…

憲法2.0についての追記

前回の憲法2.0 について、一点、言及し忘れていたのが、プライバシー権について、かなり積極的に考えようとしている印象を受けたことだ。この問題を徹底して考えることは、私の考える「暗号社会」の要諦でもあるので、そういう姿勢は個人的には評価したい、…

東京の猫

東京に来て、なにに驚いたかといえば、思ったより「緑」があるんだな、ということだった。つまり、田舎のような「自然」が、 保存 されている。それを、皇居周辺や高級住宅街のような、人工的な「保存」ということでいうなら、まあ、理解はできる。だれだっ…

憲法2.0

思想地図という本の最新刊に載っている、憲法改正案について、読んでみた(ニコ動の方は、ちょっと、おもしろかった。人は年ととると、おもしろくなるんですかねー)。 まず、これが「改正」なのか、「新」憲法として「交換」するような(ある意味での、革命…

黒い彼女

善悪二元論が、空疎なのは、その人が悪人になる「前」があった、ということに尽きている。つまり、その人は、ある「状態遷移」を経て、悪人になっただけであって、それ「以前」は、そうでなかったわけだ。 だとするなら、私たちが興味をもつべきは、その「遷…

ある「いらだち」

なぜ大飯原発「が」再稼働したのだろう? なぜ、原発が再稼働をするとしても、「他」ではなかったのだろう? ネット上にころがっている、政府寄りのニュースソースを見ても、その「意味」がさっぱり分からなかった。 そう思って、今週の videonews.com を見…

庵田定夏『ココロコネクト ヒトランダム』

もし、高校の部活が、加入が必須だった場合に、どういうことがおきるだろうか。掲題のラノベでは、たんに参加が必須なだけでなく、各部は、5人以上によって構成されることが義務づけられている。 つまり、自分が参加する部活には、5人はいなければならない…

後藤道夫「「必要」判定排除の危険」

最近出版された『ベーシックインカムは究極の社会保障か』という本は、萱野さんと東さんが、それぞれ、反対、賛成に分かれて、たがいを批判しているように読めるので、興味深く思われる人もいるのだろう。 以降では、この問題についての、自分の視点を検討し…

ニクラス・ルーマン『手続を通しての正統化』

池田信夫は、自らのブログで、現代社会が、一方において、近代以前の徳治国家のような、皇帝といった統治者による、国民に対する、属人的な恣意的強制から 自由 になっていく一方で、他方において、間接民主制を通した、市民の「意志」と一旦は切断され、濾…

「いじめ」という言葉

いじめという言葉が使われるようになったのは、いつからなのだろうか。この言葉の特徴は、その言葉の「定義」がないことだ。つまり、外在的に定義できない。 ところが、いじめをやっている側、いじめをされている側の両方は、往々にして、これが「いじめ」だ…

女帝

「愚者のエンドロール」については、以前、折木奉太郎の視点から分析したのだが、アニメの方の、「愚者のエンドロール」の部分の放映を見た印象は、その分析とは、ずいぶんと違った。 それは、その分析が間違っていたと言いたいということではない(そういう…

田中優「偽装計画停電をくいとめよう」

今日の新宿のデモも、IWJで配信していたが、多くの人がデモに参加していた。 私は、なにかが日本で変わり始めている予感がしている。 それは、参加している人たちが、ほんとうに普通の人たちだということが、大きな特徴だからだ。 こういった運動が、近年…

ルーマンシステム論における「中和」

社会の複雑化が、宮台さんの言う成熟社会、つまり、「終わりなき日常」論の、根底にある認識であった。 こういった認識は、社会の機械化、IT化の進行と共に、共有されるようになる。ITのような、コンピューターによる、高速計算装置の出現が、社会のさま…

二つの手

私たちが毎日生活していくうえで、手というのは、とても不思議な存在である。 この右手と左手が、どういうふうに不思議かというと、まあ、言うまでもないだろう。私たちが、だれかと「契約」をかわすときは、文字を書き、契約書をかわす。日常の仕事で、パソ…

L・フェスティンガー『予言がはずれるとき』

(全体的に、掲題の本とあまり関係ない話が多くなってます。) 認知的不協和理論というと、私は、漫画の『ナニワ金融道』を、思い出す。 作者が亡くなった後も、連載は続いているようだが、私は読んでいない。おそらく、さらにテクニカルな話が続いているの…