2014-01-01から1年間の記事一覧

渡邉浩一『『純粋理性批判』の方法と原理』

カントが純粋理性批判において行おうとしたことを、簡単に整理することは比較的、難しくはないのではないか、とは思っている。 まず、この本で、どんな事象の解明に取り組みたかったのかということでは、コペルニクスやニュートンが、なんらかの「つじつまを…

福谷茂『カント哲学試論』

言うまでもないが、私は、月も太陽も引っ張っているし、月や太陽も私を引っ張っている(まさに、コペルニクス的関係)。これが、物質なるものの間に起きる「重力」に関する法則なわけであるが、ということは何を意味しているかというと、 この関係を逃れられ…

福谷茂「近世哲学とはなにか」

私は昔から、なぜ「哲学」という言葉を使うのだろうか、ということが不思議であった。というのは、哲学という言葉を使う人は、大抵、ソクラテスから話し始めるからである。しかし、それはずるくないだろうか。 どういう意味か。 つまり、なぜ「形而上学」と…

チャットモンチー「少年のジャンプ」

内省的な記述は、読む人に、ある種の「いらだち」をもたらす。というのは、結局、お前の「快楽」は他人には関係ないからだ。 早い話が、人間は「幸せ自慢」が好きなのだ。そして、ニーチェが言ったように、人間が最も好きなのは、他人の不幸を「笑う」ことだ…

ポール・ヴァレリー『精神の危機』

今さらポール・ヴァレリーの重要さを強調する必要はないと思うが、前回、在特会のような「造反有理」運動であり、「錦の御旗」運動の、その「主観的」に幻想される何かについて考えていたとき、このヴァレリーのエッセイにおいて、すでに、 ドイツ脅威論 つ…

安田浩一ほか『ヘイトスピーチとネット右翼』

在特会の運動は、どこか、文化大革命における、紅衛兵に似ている。または、小泉元首相が首相のときに、靖国参拝を行ったとき、中国で起きた、反日デモに。または、2・26事件の青年将校たちが天皇に「裏切られた」と語ったことに。 それは、ようするに、時…

入江君人『王女コクランと願いの悪魔』

この小説の主人公の王女コクランと、その王女の元におかれることになるランプの精としての、悪魔との関係は、この悪魔が、あくまでも、主人の「願い」に従属する存在であることによって成立している。悪魔は、主人が「願う」ことによって、その願いを叶える…

韓国の「ラフプレイ」をどう考えるか?

私は、別に、はるか昔の日韓ワールドカップを今さらむしかえして、なにかの糾弾運動を始めたいわけではない。しかし、この問題について、なにも語られない、なにも振り返られないことに、なにか大きな違和感がどうしてもぬぐえないわけである。 そう考えて、…

ナショナリズムについての素朴な疑問

嫌韓という言葉が人口に膾炙して久しいが、韓国における「反日」に対して、日本の「嫌い」という言葉のなんとも、オブラートに包まれたその表現が、まあ、なにかを表現しているのであろう。 「反対」と言うには、そこまでは大きな問題だと思っているのかと言…

A・R・ホックシールド『管理される心』

労働者は、賃金を受けとることによって、仕事をする。つまり、命令に従う。しかしこの場合、たんにその「行為」にのみ注目するのは正しくない、と掲題の著者は指摘する。つまり、この場合に、 何を売っているのか? について、もう少し、踏み込んで考える必…

井上芳保『つくられる病』

村上春樹の小説を読んだとき、ああいった「内面」を語ろうとするスタイルに対して、なにか気持ち悪い感覚を覚えたことがある。夏目漱石の「標準語」に非常に近い文体で、主人公という「僕(ぼく)」が、延々と 自己を語る というスタイルをとる。ここで語ら…

杉晴夫『論文捏造はなぜ起きたのか』

つい最近、国が国立大学における、人文教養系の学部学科の「廃止」を提言したことは、驚きをもって受け取られたと共に、これが一体、何を意味しているのか、といった視点で考えさせられた。 おそらく、日本政府は、かなり「本気」なんじゃないか、と思われる…

河野裕『いなくなれ、群青』

柄谷行人の『近代日本文学の起源』において問題にされていたのは、明治以降の言文一致の問題であった。この場合、問題とされたのは、 日本語の発明 という問題であった。例えば、夏目漱石の小説を読むと、私たちは「驚く」。というのは、漱石が書いた文章が…

原発再稼動を「しょうがない」と言う不思議

原発問題を考えるとき、私にどうしても解せなかったのが、なぜ、どんな世論調査でも、原発の再稼動に半分を大きく超えて反対が占めているのに、原発の再稼動を行うべきだとか、原発の新規建設をすべきだ、といったようなことを言い始める専門家が後を絶たな…

平雅行『親鸞とその時代』

ここのところ、なぜ今さら、歎異抄に興味をもち始またのかと言えば、子安信邦さんの新刊の『歎異抄の近代』を読んだからだが、その内容は私が、この人の本を読んできたものとは、ずいぶんと違う印象を受けた。 そもそも、多くの人は、なぜ「歎異抄」なのかを…

不良と純粋さ

今ごろ、「ホットロード」が映画化されていることに、いろいろと思うところがあるようだが、ようするに、今までは、原作者が断ってきて、企画はされても、実現されなかったということらしい。 とはいえ、私はまともに原作を読んだ記憶もなく、今さら読み直そ…

「日本会議クーデター」内閣

安倍政権が、内閣改造を行ったことで、驚くべき事態が起きた。それは、その閣僚メンバー19人のうち、15名が、日本会議という右翼系団体のメンバーだったことだ。しかし、もっと驚くべきは、そのことを、大手マスコミがまったくふれないことだ。大手マス…

「ハナヤマタ」のマチ

アニメ「ハナヤマタ」と「けいおん」の違いは、なんだろうか? おそらくそれは、「ハナヤマタ」の主要登場人物の基層低音に流れる「シリアス」さにあるのであろう。「ハナヤマタ」の主要登場人物たちには、どこか「部活をやる」ことについての、明確な動機が…

ピーター・シンガー『私たちはどう生きるべきか』

私はときどき、近代皇国イデオロギーというのは、本当に存在するのか、と考えることがある。もちろん、当時も今も、神道的に、大変に思い詰めて、宗教的な生活をしている人たちがいるだろうことを疑っているわけではない。 そうではなく、いわゆる、国家中枢…

ある感情

世の中には、どうも二つの「価値」と呼ばれているものがありながら、多くの場合、一方で全てが説明され、他方については、まったく無視される、という現象が続いている印象を受ける。 つまり、一方が道徳であるのに対して、他方は、一般に「倫理」と呼ばれて…

「宣長問題」と呼ばれていたもの

私たちは、この日本という文脈の中を生きている存在として、当然、明治から敗戦まで、この日本の文脈を席巻し、そして、その影響は今にまで続く、 近代皇国イデオロギー を意識せずに生きることはできない。それは、端的な例として、安倍首相や彼をとりまく…

渡辺清恵『不可解な思想家 本居宣長』

本居宣長は、明治の日本の教育界において、特別な存在であった。それは、教科書での扱われ方が、そのものずばりそうであった、ということなのだが、つまりは、近代イデオロギーとして特別に受けとられていた、ということになる。 確かに、彼自身が、自らの著…

安藤馨「あなたは「生の計算」ができるか」

日本中の、過半数を超える人たちが、いい加減、原発をやめてくれないかと、どんなアンケートをとっても答えているのに、相変わらず、日本の総理大臣である、安倍さん一人が、意地でも、原発推進を進めたいと言い続けている様子は、この人は、他の政策もそう…

「ばらかもん」とプチ・ヤンキー

前回、なぜ「アフリカ的段階」なるものについて言及したのかといえば、中沢新一が対談で言及していたからであるが。 中沢 でもやっぱりアジアのもっとも重要な特異点は中国です。むしろアジアのなかでも異質と言ってもいい。だからASEAN諸国と日本VS.中…

アフリカ的段階?

さて、人類の「起源」とはなんなのか、と言われたとき、そんな途方もない話に答えられるわけがない。きっと、サルと、はるか太古の時代に、枝分かれして、今の人間になった、といったような、まあ、ダーウィン流の進化論によって、ちょっとは、なにかが分か…

アーサー・C・ダント『哲学者としてのニーチェ』

私たちが思っている以上に、カントやニーチェは、私たちの今の「常識」い近い。むしろ、そのことが理解されていないことが、さまざまなことに対する認識の齟齬生んでいる、と言えるのかもしれない。 しかし、そういったふうに言った場合に、しかし、やっぱり…

小泉義之『ドゥルーズと狂気』

(ガザで千人というのは、ちょっとありえないと思っていたら、エボラウイルスのパンデミックでも千人ということで、どうなっているんだと思っていたら、ウクライナは二千人だそうで、ちょっと分からないのが、つまり、こういった戦線が、いったん開かれると…

無為

安倍首相がこだわる、福島の浜通りにロボット開発拠点を作る野望について、私はその「うさんくささ」を指摘したわけだが、つまりはそれは、一種の 贈与 として行われる、ということなのである。もちろん、なにかをあげると言われて、普通は嫌な気はしないも…

均分化

ガザの爆撃は人間の非人道的行為として恐しいなあ、と思っていたら、なんと、エボラウイルスによるパンデミックによって、すでに、千人近くが亡くなっているという話を聞いて、自然の 反乱 というのは、恐しいなあ、と思ったものである。つまり、別に、人間…

柄谷行人『帝国の構造』

イスラエルによるガザ虐殺が止まらない。21世紀に入った、この現代において、ここまでの民族浄化が行われるということは、私には想定できなかった。つまり、そんなことは国際社会が許さないと思っていた。 しかし、アメリカのブッシュ元大統領が行った、イ…